ボビー・ワトソンと過ごした約3ヶ月間。
音楽による数々の奇跡を体験した。
ボビー・ワトソンとは”ルーファス”という
チャカ・カーンがリード・ボーカルをしていた
バンドのベーシストである。
グラミー賞を2度受賞していて
マイケル・ジャクソンのプロデュースを頼まれたりと
アメリカでは超のつく有名人である。
ロスにて、満席だからと矢沢永吉が入店を断られている
レストランでVIP席に通された時もあった。
これは自分がレコード会社のディレクターをしていた時の話。
ボビーに仕事で、あるアーティストのアルバムを
プロデュースしてもらうことになった。
ボビーはレコーディング時にはレコード会社のスタッフを
絶対にスタジオに入れない。
が、なぜなのか自分は一緒にやらせてもらっていた。
ボビーをよく知っている人は驚いていた。
そんなある日、ボビーとスタジオでふたりきりで作業をしていた。
キーボードの前に並んで座り、ベーシックなリズムを打ち込んでゆく。
ふと、ボビーが手を休めて体ごとこちらに向かい直った。
真剣な眼差しで、こちらの目をまっすぐに見ている。
しばしの沈黙。
「カネコサン、タイセツなコト、ヒトツ、アリマス・・・」
いったいボビーは自分に何を伝えようとしているのだろうか。
すごい事が聞けるんじゃないのか?グラミー賞だし。
「カネコサン、タイセツなコト、ヒトツだけデス」
「・・・・・・・・」
「ワリバシ、ハナにイレタラ、ダメ」
「・・・・・・・?」
「クルマ、ウンテン、スル。キュウブレーキ。ボン!
ハナヂ、デルネ。ワリバシ、ダァメ」
「・・・・・・・・」 さすが。グラミー賞・・・